眼瞼腫瘍

病態

「まぶた」に結節(小さなデキモノ)が形成される場合があります。
犬の眼瞼に発生する腫瘍の多くは良性で、遠隔転移をするものは少ないとされています。
しかし、目に当たって結膜炎を引き起こしたり、出血するものもあり、動物に不快感を与えるものは摘出したほうが良い場合があります。
猫においては眼瞼に形成されるものでも悪性のものが多いとされ、扁平上皮癌、リンパ腫、肥満細胞腫、メラノーマなどの悪性腫瘍が報告されています。

診断

腫瘍が大きい、あるいは急速増大するものは針生検を実施。
腫瘤が小さい場合は切除生検で取って病理検査に提出することもあります。

治療

外科切除が基本になります。
V字に切除した後、細い糸で縫合します。病理検査結果に応じて補助治療を検討します。

できものが当たって結膜炎を繰り返していたワンちゃん

病理検査:マイボーム腺腫
良性腫瘍で術後経過良好でした!

心基底部腫瘍

病態

非常に稀な腫瘍です。
心臓の入り口付近にできる腫瘍で、予後が悪い腫瘍の1つです。
最近人気のボストンテリア(短頭種)に発生が多いとされています。

診断

腫瘍によって心臓や肺、気管が圧排されて息苦しさ等の症状がでます。
レントゲンでは胸領域に白い影が確認されるので、肺腫瘍や胸腺腫、異所性甲状腺癌等が鑑別に上がります。
エコーで心基底部の腫瘍を確認し、可能であればFNA(針生検)で診断をつけます。

治療

根治困難な病気の一つで、緩和治療を中心に行います。
心臓周囲に液体が溜まる(心タンポナーデ)ことがあるので、心膜切開が有効との報告もあります。

白血病

病態

白血病には急性と慢性があり、今回は慢性リンパ球性白血病の症例です。
慢性リンパ球性白血病は、成熟したリンパ球が以上に増えて、血液や骨髄、リンパ節、脾臓に浸潤する病気です。
中高齢の犬に多く発生し、猫では少ないです。

診断

白血球数が増加し、リンパ球数が20000/ul以上の場合は強く疑われます。
脾臓が腫大していたワンちゃん症例のご紹介をします。
白血球数:33800/ul リンパ球数:22800/l

増加した成熟リンパ球
腫大し、虫食い状に低エコーになった脾臓(診断時)
同じ部位の寛解時のエコー画像

治療

抗癌剤による治療が中心となります。
寛解(症状が出ていない状態)にできれば、長期予後が見込めます。
今このワンちゃんは経過良好で、エコーで脾臓が小さくなっています。
現在は定期検診を受けていただいています。

骨肉腫

病態

骨肉腫は大型犬に頻発し、高率に肺に転移を起こす悪性腫瘍です。
とても痛い病気で、膝から遠く肘から近い長骨に病変が存在することが多いです。
病的骨折などで来院されるケースもあります。

診断

レントゲンで患部と肺の撮影を行います。関節を超えて病変が存在することは稀で、FNA(針検査)や骨生検などで病理学的に診断します。

治療

とても痛い病気なので、痛みを取るために足を切る治療があります。(断脚手術)
断脚手術のみでは根治はできず、100日前後の生存期間と言われています。
そこで、術後補助化学療法が必要となりますが、やはり根治は難しく、犬の予後は厳しく断脚と抗がん剤の治療で平均300日程度の生存期間が期待されると言われています。
猫ではもっと長期的な予後が期待でき、2〜4年ほどと言われております。

精巣腫瘍

病態

精巣が「がん化」した状態。
陰嚢内にある場合よりも、腹腔内(お腹の中)や鼠径部(内股)に精巣がある場合、がん化するリスクが約9倍上がるとの報告もあります。
セルトリ細胞腫、ライディッヒ細胞腫、セミノーマといった腫瘍があります。

診断

精巣は通常陰嚢内にあり、左右で大きさが変わらない状態が正常です。
触診上片側の精巣が大きくなっている場合は精巣腫瘍の可能性があります。

治療

精巣摘出が主な治療です。
陰嚢まで浸潤がある場合は、陰嚢ごと切除します。
術後の病理検査で良性・悪性の判断をします。

腫瘍化した精巣
萎縮した精巣
術後
左:萎縮 右:精巣腫瘍

外陰部腫瘍

病態

外陰部に形成される腫瘤として、乳腺腫瘍や膣および尿道の腫瘍、皮膚腫瘍などが挙げられます。
今回は外陰部の脇に腫瘤が形成された子のお話です。
陰部が腫瘍で押されて、右側に変位しています。このまま放置し、腫瘍が大きくなって尿道を圧迫し、尿が出なくなる危険性を考え、検査・手術をすることになりましたので。

診断

針生検(FNA)や切除生検による腫瘤の確定診断ののち、手術範囲を決定します。
また血液検査や画像診断で基礎疾患や遠隔転移の有無を確認する必要があります。
今回はFNAで紡錘形の細胞が得られ、平滑筋腫瘍が考えられたのですが、乳腺組織との関連も完全には否定できず、尾側乳腺(3−5乳区)と同時に、尿道を確保し外陰部毎一括切除する事となりました。

治療

外科切除が第一選択となることが多いです。
手術:尾側乳腺(3−5乳区)と同時に、尿道を確保し外陰部毎一括切除
病理検査:平滑筋腫 マージン(ー)
良性腫瘍であり、切除後経過良好です。排尿も問題ありませんでした。

乳腺腫瘍

病態

乳腺腫瘍は中高齢の未避妊雌において最も一般的に認められる腫瘍です。
良性と悪性(乳癌等)の比率は50%:50%と言われています。
初回発情前(生後半年前後)に避妊手術をすると、腫瘍発生率が0.5%以下に抑えられると言われています。

診断

未避妊の雌といったヒストリーと、乳腺部に「しこり」ができている事を確認します。
触診のみでは他の腫瘍の可能性もあるので、出来る限り針検査(FNA)等で腫瘍細胞の確認をします。

巨大腫瘤
1列切除術後
乳癌
乳癌
術後 摘出した腫瘍

治療

手術による摘出が第1選択となります。
乳腺腫瘍を確認したら、腫瘍の転移の有無や、全身状態を確認するために血液検査やレントゲン検査を実施します。
乳癌や悪性度の高い腫瘍の場合は補助的に抗癌剤を使います。

副腎腫瘍(クッシング症候群)

病態

クッシング症候群と呼ばれる病気の分類の一つに副腎の腫瘍があります。
クッシング症候群は犬で多く、その中で副腎が腫瘍化するものは全体の2割程度と言われています。(副腎腫瘍)
今回は下垂体性副腎腫瘍(PDHと言われます)のご紹介をします。

診断

臨床症状の有無が最大の焦点となります。
症状:多飲多尿、多食、脱毛、腹囲膨満、呼吸が荒いなど
血液検査、腹部超音波検査などによるスクリーニング検査で疑わしい症例は、ACTH刺激試験・LDDSTという血液検査を行います。
正常な副腎は6mm以下ですが、下の写真の子は両側副腎が10mmに腫大しています。

腫大した副腎①
腫大した副腎②

治療

内科治療と外科治療に分けられます。通常PDHは内科治療で維持されることが多いです。
副腎に腫瘍が形成された場合は副腎の摘出が選択されるケースが多いですが、副腎からはアドレナリンが血中に分泌されており、全身麻酔・手術などで過剰に分泌されてしまうと不整脈や心停止などが起こるケースがあり、リスクの高い手術になります。
手術のメリットデメリットを十分理解した上で決定する必要があります。

移行上皮癌

病態

膀胱に発生することが多い腫瘍です。
老齢の犬に多くみられ、メス犬に多く発生する傾向があります。
症状は、血尿や頻尿、痛みを伴う排尿困難など、膀胱炎の症状に似ています。

診断

年齢等を考慮し、膀胱炎との区別が必要になります。
画像検査(レントゲン、エコー)や、尿検査などを行います。

膀胱三角部にMass病変(できもの)が発生しています

治療

早期に発見した場合は腫瘍を切除します。
症状が進行し、手術が行えない場合は、内科的治療を行います。

リンパ腫

病態

リンパ腫は癌化したリンパ球が病変を作る血液がんの一つです。
いくつかのタイプがあり、その一つを消化器型リンパ腫と言います。
胃に発生することもあり、胃の壁が分厚くなり食事を取れない状態になるケースもあります。

診断

針で細胞を吸引し、顕微鏡で観察、又は病理検査で、腫瘍性リンパ球が存在しないか確認します。

治療

ビンクリスチン、サイクロフォスファマイド、アドリアマイシン、プレドニゾロン、L-アスパラギナーゼと言った抗がん剤がメインとなりますが、副作用の少ない抗がん剤もございます。
治療は状態に応じていくつも方法がありますので、まずはご相談下さい。

肥厚した胃粘膜(黄色線 10mm)
同部位の抗がん剤治療後(黄色線 2mm)