頸部椎間板ヘルニア
病態
頸椎間(頸の骨の間)にある椎間板が神経を圧迫する病気です。
首の骨に沿って激しい痛みがあります。頭が上がらない、左右どちらかしか向けない、足がふらついてすぐ座り込む、などの症状がみられます。
重症になる麻痺し、立つことができなくなります。
診断
身体検査と神経学的検査を行い、症状を確認します。
特に踏み直り反応・飛び直り反応が低下することがあります。
症状や触診、神経学的検査によってこの病気であると推測することができます。
病変の存在を推測した部位に合わせてレントゲンを行います。
確定にはCT・MRI検査が必要です。
治療
内科的治療と外科的治療があります。
内科的治療は比較的軽度な症例の場合に行います。頸部を簡易包帯やコルセットで固定すると少し楽になります。
当初から後肢の麻痺が発現した重度の症例には外科的治療を行います。
腰部椎間板ヘルニア
病態
骨と骨の間にある「椎間板」が飛び出し(ヘルニア)、脊髄を圧迫し痛みや麻痺が生じる病気です。
ダックスフンドがなりやすいと言われています。
30cm程度の段差の乗り降りでも発症することがあります。
重症度に応じてグレード分類(I〜Ⅴ)を行い、検査や治療を決定します。
診断
症状や触診、神経学的検査によりこの病気であると推測することができます。
病変の存在を推定した部位に合わせてレントゲン検査を行います。
必要に応じてCT検査、MRI検査を行います。
治療
内科的治療と外科的治療があります。
内科的治療は症状が軽度の症例の場合に行います。(グレードI〜Ⅱ)第一の治療は安静に保つことです。
内科的治療で改善がみられない場合は外科的治療を行うことになります。
脊髄空洞症
病態
脊髄内に空洞形成が認められる病気です。(人では難病に指定されています)
先天性のものは、後頭骨形成不全(頭部の骨の形成異常)から生じることが多いです。
後天性のものは、脊髄の外傷や、椎間板ヘルニア、腫瘍、ウイルス性脊髄炎などに続いて起こる場合があります。
神経症状(ふらつき、段差が乗り越えられない、転倒等)が現れたの後に、進行性に悪化していきます。
診断
神経学的検査を実施し、神経の損傷部位を推定します。
レントゲン検査だけでは難しく CT検査や、MRI検査の実施が必要です。
治療
若く手術適応の場合は、大後頭孔拡大術(骨を削る減圧)を行います。
高齢の場合、多くは脳脊髄液を少なくする対症療法を実施することになります。
てんかん発作
病態
発作的に繰り返される全身のけいれんや、意識障害を主な症状とする脳疾患です。
全身性の発作と(全般発作)、軽度な発作(部分発作)の2種類に分類されます。
発作の前兆として、落ち着きがない、一点を見つめる、動物が不安定になるなど、症状が多々みられます。
診断
血液データや心臓のデータを取り、意識障害が生じる他の病気を除外して、脳の病気と確定させます。
脳の状態を診断するには、全身麻酔のCT検査やMRI検査が必要です。
治療
脳波以外に異常のない「特発性てんかん」であれば、毎日の投薬により、てんかんが起こりにくい様にコントロールしていきます。
脳炎や脳腫瘍などの「症候性てんかん」であれば原因疾患の治療をしていきます。
角膜黒色壊死症
病態
角膜(目の表面)が黒色に変色し、その部分が「壊死」してしまう病気を角膜黒色壊死症と言います。
猫に一般的にみられ、特にペルシャ、ヒマラヤンに多く報告されており、原因としてヘルペスウイルス感染による角膜感染や眼瞼内反による角膜刺激が報告されています。
しばしば痛みを伴い、涙が多く出ることが多いです。
診断
検眼による特徴的病変の確認をします。
角膜に傷がつくケースもあり、フルオレセイン染色(傷の確認)が必要になる場合もあります。
治療
眼瞼内反がある場合は、手術での眼瞼形成を検討します。
点眼薬やエリザベスカラーで感染予防や角膜保護がメインの治療になり、経過が長くなりやすい病気です。
壊死病変が消失した後に、不快感が消失します。
この猫ちゃんは茶色斑点が角膜に認められ、徐々に黒化していきましたが、半年後には病変が無くなり不快感も改善しました。
角膜潰瘍
病態
目の表面(角膜)に傷が入ることです。鼻が短い(短頭種)の犬に多いです。
羞明(目をしょぼしょぼする)、流涙(なみだ)、角膜浮腫(白く濁る)、目ヤニ、角膜への血管の侵入がみられます。
診断
特殊な染色液を用いて目の傷の有無の検査を行い、上皮に欠損があることを確認します。
(下図の緑色の部分が目の傷です。)
場合によっては、角膜潰瘍の部分から細菌検査を行い、細菌の培養を行います。
治療
細菌検査の結果に基づき、抗生物質や保湿の点眼、内服薬の投与を行います。
また、動物が目をこすらないようエリザベスカラーを装着します。
緑内障
病態
眼圧が上昇することにより視神経と網膜に障害が発生し、その結果、一時的、または永久的な視覚障害が起こる病気です。
犬ではよく発生しますが、猫の発生は犬と比べると多くはありません。
診断
目の圧力(眼圧)を測定します。緑内障の原因にも原発性や腫瘍性があるので、原因を調べるために、眼球のエコー検査を実施する場合もあります。
治療
治療には内科的治療と外科的な方法があります。
どのような治療法を選択するかはタイプや進行具合で異なります。
白内障
病態
犬の白内障の多くは老化によるもので7歳過ぎた頃から、水晶体に混濁が出始めます。
目が白くなり、視力が低下するため段差でつまづいたり、夜物が見えにくくなります。
診断
目を外側から見て白眼や目の中に異常がないか見ます。
水晶体(レンズ)が加齢に伴い硬くなる「核硬化症」と鑑別をします。
また、エコー検査を行うことがあります。
治療
犬の白内障の治療には、目薬や内科的治療、手術による外科的治療があります。
若齢の白内障で視覚障害や、失明している場合は手術が必要となります。
視覚が保たれている時は内科的治療が選択されますが、目薬や飲み薬は、さほど効果が期待できるものではありません。
異所性睫毛(逆まつげ)
病態
マイボーム腺に存在する毛根の向きの異常により、まつ毛が角膜側に向かって生えるものです。
まつ毛に異常があると、角膜が刺激され、涙眼になったり、角膜腫瘍を起こすことがあります。
診断
目脂、涙が多い場合は目の検査をして、逆まつげの有無を確認します。
治療
異常なまつ毛を除去します。
ぶどう膜炎
病態
虹彩、毛様体、脈絡膜という目の構造に炎症を生じる疾患を、「ぶどう膜炎」と呼びます。
ぶどう膜炎の原因は、感染、外傷、免疫性、腫瘍など多岐に渡り、結膜炎よりも治療に時間のかかる病気の一つです。
診断
角膜や、結膜に外傷がないことを確認し、ぶどう膜炎の手がかりになる所見を観察します。
治療
点眼薬で、炎症の鎮静化、痛みの緩和をはかります。
最終的に最も重要なことは視覚の温存です。
この子は目をしょぼしょぼさせているということで来院され、角膜潰瘍からぶどう膜炎が生じていました。
少し時間はかかりましたが、エリザベスカラーや点眼の治療で経過良好でした。