蛋白喪失腸症

病態

腸管から多量の蛋白を失うことにより、低蛋白血症になる全身疾患です。
よくみられる症状は慢性的な下痢です。その他に、元気が無くなったり、体重減少、嘔吐、脱水がみられます。
免疫異常や、腫瘍が関連して発症することが多いです。好発犬種はミニチュアダックスです。

診断

身体検査、便検査、血液検査を行います。
エコー検査で小腸にシマウマ状陰影(ゼブラサイン)が見られることもあります。
内視鏡を用いて検査したり、場合によっては開腹して生検(組織検査)を行うこともあります。

治療

免疫疾患に伴って発症している場合は、その治療(ステロイドや免疫抑制剤)を行います。
食事療法で改善する場合もあります。(低アレルギー・低脂肪食等)
腸のリンパ腫が原因の場合は、抗がん剤の投与が有効的です。

膵炎

病態

急性膵炎と、慢性膵炎があります。

急性膵炎 膵臓の消化酵素が何らかの原因で活性化されることにより、膵臓自体が自己消化されて起こります。
食事や薬物、遺伝性が原因と考えられています。犬に多いです。
慢性膵炎 急性膵炎が長引いたり、繰り返し起こることによって慢性化した状態をいいます。
老齢の猫がなりやすいですが、無症状で経過することも多いです。

診断

急激なお腹の痛みや、食欲不振、嘔吐が症状で出ることが多いです。
身体検査では右上腹部の圧痛(抑えると痛い)、背湾姿勢(頭を下げて腰を上げる姿勢)などが見られることが多いです。
血液検査で、白血球の増加、肝臓や膵臓酵素活性の上昇(Lip、c-PLI)がみられます。
また、レントゲン、エコー行い膵臓領域の状態を確認して診断します。

治療

痛みや、ショック症状を抑えるため、補液や鎮痛薬を投与し、短期間の絶食により、膵臓の活動を抑制します。
嘔吐が治まれば、低脂肪の食事を少量ずつ与えます。

腸炎

病態

下痢を主な特徴とする腸粘膜の炎症です。
原因には、食事や薬物、感染症、ストレスなどがあります。
水様性または粘血性の下痢が一般的な特徴で、嘔吐、脱水がみられることもあります。

診断

異物や他の病気を除外して、症状と身体検査、糞便検査等で診断します。

治療

対症療法として、急性例では腸を休ませるために、半日~1日絶食をします。
慢性例には、食事療法と、下痢止めの薬を投与します。
激しい下痢、嘔吐、脱水がみられる場合は、点滴を行います。

胆石

病態

胆石は、胆汁がうっ滞することにより、成分が変化し、結石状になったものです。
通常胆嚢や、総胆管の中に形成されます。
肝内胆管(肝臓の中)に形成される場合もあり、その場合は治療が長期化する場合が多いです。

肝臓内胆石

診断

血液検査で肝臓や胆嚢マーカーの確認、レントゲン、エコー検査で結石の有無を診断します。

治療

胆石が塞栓している(詰まっている)場合は、内科的治療は効果が得にくいため、外科的な摘出が行われます。
食事療法や内服で新しい胆石ができるのを予防します。

胆泥

病態

胆泥とは、胆汁が濃縮して黒色化し、泥状の胆泥として貯留した状態です。
体質や食物の影響で貯留してしまうことが多いです。
シュナウザーやシェルティーなど胆泥が溜まりやすい犬種もいます。
猫では胆泥貯留があれば感染があると言われています。
完全に閉塞する場合は胆嚢が破裂する場合もあります。(胆汁性腹膜炎)

診断

血液検査で胆嚢マーカーの確認や、レントゲン、エコー検査で胆嚢の状態を確認します。

胆泥

胆泥が重度に貯留した「胆嚢粘液嚢腫」という状態になると、粘膜が黄色くなる「黄疸」する場合があります。

治療

胆嚢炎や、内分泌性疾患がみられる場合は、その治療を行います。
利胆薬や、抗生物質の投与で改善される場合もあります。
胆嚢粘液嚢腫の場合は緊急手術で胆嚢摘出をする場合もあります。

胆嚢粘液嚢腫

病態

症状や、兆候としては、食欲不振、下痢、嘔吐、沈うつ、腹部の痛み、黄疸などがみられます。
中齢~高齢の犬に多くみられ、猫では類似疾患はありますが、胆嚢粘液嚢腫と確定診断された報告はありません。
緊急性が高い病態で、早期の手術が必要な場合が多いです。

診断

血液データで肝臓、胆嚢マーカーの確認と、CRP(急性炎症マーカー)の確認をします。
レントゲン、エコーで画像検査をします。
胆嚢がキウイの断面のように描出される場合(放射状パターン)は緊急性が高い状態です。

胆嚢粘液嚢腫

治療

利胆薬、抗菌薬の投与をします。
胆嚢粘液嚢腫の場合は緊急手術で胆嚢摘出をする場合もあります。
胆汁性腹膜炎を併発している場合は、周術期死亡率が高いと言われています。

胃炎

病態

胃炎には、胃粘膜に急性の炎症が起こる急性胃炎と、胃粘膜への刺激が繰り返される事によって慢性的に胃が炎症を起こす慢性胃炎があります。

急性胃炎急性の嘔吐が特徴的です。
慢性胃炎食事とは無関係に嘔吐が起こり、食欲不振、腹痛、腹鳴などを起こします。

診断

急性胃炎通常1-3日間の対症療法で様子をみます。治療でよくならない場合はより詳細な検査をします。
慢性胃炎身体検査、血液検査を行い、嘔吐の原因として消化管以外の病気がないか、レントゲンで異物の有無を確認します。

治療

急性胃炎吐き気止めや、胃酸抑制薬を投与し、消化のよいフードを少量ずつあたえます。脱水症状があれば、点滴を行います。
慢性胃炎刺激が少なく炭水化物を多く含むものを少量ずつ与えるようにします。吐き気止め、粘膜保護薬、抗菌薬、免疫抑制薬を投与する場合があります。

炎症性腸疾患

病態

胃、小腸、大腸の粘膜が炎症を起こしてる状態のことをいいます。(IBDと呼ばれます)
慢性的な下痢や嘔吐、体重減少が見られる事があります。
小腸での発生が多く、犬・猫ともに6歳以降での発症が報告されています。
遺伝的な要因、食物環境、細菌感染、アレルギー、免疫システムの異常が考えられています。

診断

身体検査、便検査等で他の病気や寄生虫疾患を除外します。
血液検査、エコー検査などを行ない、身体の蛋白の状態や炎症の程度を把握します。
腫瘍性の場合もあるため、確定診断には消化管の生検が必要な場合もあります。

消化管壁の肥厚

治療

食事療法や薬物療法を用いて、下痢・嘔吐の軽減、そして、食欲と体重を戻すことが重要です。
食事療法単独では改善が見られなくても、内服薬と併用するとその有効性を高める可能性があります。