犬の膣腫瘍
愛犬に見られる「膣腫瘍」って?
― 早めの気づきとケアが大切です ―
膣腫瘍(ちつしゅよう)は特に中高齢の女の子(メス犬)によく見られる病気です。
このページでは、膣腫瘍について、飼い主さんにもわかりやすくご説明します。
※ページ下部に膣腫瘍の写真を掲載しています。苦手な方はご注意ください。
■ 膣腫瘍とは?
「膣腫瘍」は、わんちゃんの膣の中に“できもの”ができる病気です。
多くの場合、しこりのような腫れが見つかり、出血やおりものが出ることもあります。
腫瘍には良性と悪性があり、見た目だけでは判断が難しいこともあります。
特に高齢で避妊していない子はリスクが高くなります。
■ こんな症状があったら要注意!
おしっこが出にくそう/回数が増えた
外陰部(陰部)から血が出ている、おりものが出る
陰部が腫れている、しこりがある
わんちゃんがしきりに陰部をなめている
元気や食欲がない
これらのサインに気づいたら、なるべく早く動物病院での診察をおすすめします。
■ 原因と予防
膣腫瘍の原因ははっきりとは分かっていませんが、ホルモンの影響が関わっていると考えられています。
そのため、避妊手術を受けていない高齢の女の子に多く見られます。
【予防のポイント】
若いうちの避妊手術が、膣や子宮の腫瘍予防につながります
日頃から陰部まわりの様子を見て、変化に気づくことが大切です
■ どんな治療をするの?
膣腫瘍の治療は、腫瘍のタイプや大きさ、進行の程度によって変わります。
主な治療法は以下の通りです:
🩺 手術による切除:良性のものや、初期の悪性腫瘍には効果的です
💊 抗がん剤治療:一部の悪性腫瘍や「TVT(伝染性性器腫瘍)」という特殊な腫瘍に使います
📋 経過観察:小さくて症状のない腫瘍の場合、定期的に様子を見ることもあります
治療の方法は、検査の結果をもとに獣医師とよく相談して決めていきます。
■ 早期発見が、わんちゃんの笑顔を守ります
膣腫瘍は、初めのうちは症状がわかりにくいこともあります。
でも、飼い主さんのちょっとした気づきが、わんちゃんの健康を守る大きな一歩になります。
「最近なんとなく様子が違うかも…」と感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。
■ 膣腫瘍の写真について
以下に、実際の膣腫瘍の写真を掲載しています。
診断や治療の参考になるよう、獣医師の監修のもと掲載しておりますが、出血や腫れのある画像も含まれますので、苦手な方は閲覧にご注意ください。
犬の膣腫瘍切除前の写真
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精巣腫瘍
病態
精巣が「がん化」した状態。
陰嚢内にある場合よりも、腹腔内(お腹の中)や鼠径部(内股)に精巣がある場合、がん化するリスクが約9倍上がるとの報告もあります。
セルトリ細胞腫、ライディッヒ細胞腫、セミノーマといった腫瘍があります。
診断
精巣は通常陰嚢内にあり、左右で大きさが変わらない状態が正常です。
触診上片側の精巣が大きくなっている場合は精巣腫瘍の可能性があります。
治療
精巣摘出が主な治療です。
陰嚢まで浸潤がある場合は、陰嚢ごと切除します。
術後の病理検査で良性・悪性の判断をします。




外陰部腫瘍
病態
外陰部に形成される腫瘤として、乳腺腫瘍や膣および尿道の腫瘍、皮膚腫瘍などが挙げられます。
今回は外陰部の脇に腫瘤が形成された子のお話です。
陰部が腫瘍で押されて、右側に変位しています。このまま放置し、腫瘍が大きくなって尿道を圧迫し、尿が出なくなる危険性を考え、検査・手術をすることになりましたので。


診断
針生検(FNA)や切除生検による腫瘤の確定診断ののち、手術範囲を決定します。
また血液検査や画像診断で基礎疾患や遠隔転移の有無を確認する必要があります。
今回はFNAで紡錘形の細胞が得られ、平滑筋腫瘍が考えられたのですが、乳腺組織との関連も完全には否定できず、尾側乳腺(3−5乳区)と同時に、尿道を確保し外陰部毎一括切除する事となりました。

治療
外科切除が第一選択となることが多いです。
手術:尾側乳腺(3−5乳区)と同時に、尿道を確保し外陰部毎一括切除
病理検査:平滑筋腫 マージン(ー)
良性腫瘍であり、切除後経過良好です。排尿も問題ありませんでした。



乳腺腫瘍
病態
乳腺腫瘍は中高齢の未避妊雌において最も一般的に認められる腫瘍です。
良性と悪性(乳癌等)の比率は50%:50%と言われています。
初回発情前(生後半年前後)に避妊手術をすると、腫瘍発生率が0.5%以下に抑えられると言われています。
診断
未避妊の雌といったヒストリーと、乳腺部に「しこり」ができている事を確認します。
触診のみでは他の腫瘍の可能性もあるので、出来る限り針検査(FNA)等で腫瘍細胞の確認をします。





治療
手術による摘出が第1選択となります。
乳腺腫瘍を確認したら、腫瘍の転移の有無や、全身状態を確認するために血液検査やレントゲン検査を実施します。
乳癌や悪性度の高い腫瘍の場合は補助的に抗癌剤を使います。