肥大型心筋症

病態

猫に一番多い心臓病で、心臓の筋肉「心筋」が腫れてしまう病気です。
遺伝的な要因が言われており、中~高齢の雄猫に多く発生しますが、1歳以下の若齢でも発生しています。
重度の場合は、突発性の発咳や、呼吸困難、血管に「血栓」が詰まる「血栓症」が起こることがあります。(特に後ろ足)
突然痛がったり、立てなくなったり、後ろ足を引きずる症状です。
不整脈の程度によって、元気消失、虚脱、失神、突然死する場合もあります。

診断

身体検査では、粘膜の色や聴診で心雑音を確認します。
血液検査や、レントゲン、心エコー検査などを行います。
心エコー検査では心臓の筋肉の厚みや血液の逆流量を測定します。

収縮期
拡張期
逆流

治療

根治が難しい病気の一つで、経口薬による内科治療を行い、悪化のスピードを遅らせたり重症化を防ぎます。
血管拡張薬、強心薬、ベータブロッカー、利尿薬などを投与し、また動物を安静に療法食(減塩食等)を与えることも必要です。

猫ウイルス性鼻気管炎

病態

「猫風邪」と呼ばれるもので、猫ヘルペスウイルスが原因です。
母子免疫が弱まる6~12週齢の子猫に多く発生します。
子猫が主に鼻炎とくしゃみが多く発生した場合はこの病気を疑います。
重症化すると結膜が癒着したり(目がくっついて開かない)、気管支肺炎の危険性もあります。

診断

典型的な症状から診断します。
子猫から成猫に感染する場合もあります。
成猫が重症化する場合もあるので、鼻炎症状がある猫ちゃんとは隔離が必要な場合があります。

治療

予防にはワクチンが有効です。
発症した場合は、鼻水に対してネブライザーや去痰薬、目ヤニに対して点眼
二次感染に対しては抗生物質などを用いて治療します。

僧帽弁閉鎖不全

病態

心臓を4つの部屋に区分する「弁」が閉じない病気を「弁膜症」と言います。
小型犬の心疾患のうち、75%~85%が僧帽弁閉鎖不全症(MR,MI)です。
老齢の小型犬(チワワ、マルチーズなど)に多く発生し、最終的に心不全を起こします。
また、キャバリアには若い頃からMRが生じることが知られています。

診断

咳が出る、疲れやすい、呼吸が荒いといった症状が出ます。
小型犬に心雑音の聴取がされればMRの可能性が高いです。
レントゲン、心エコー、心電図など、各種臨床検査を用いて正確な病態を把握します。

治療

外科治療が根本的な治療法ですが、実施施設は限定されます。(当院では実施できません)
外科治療ができない場合は、お薬による内科的治療がメインとなります。
症状の緩和、生命予後の延長を目的としています。

フィラリア症

病体

蚊を媒介して犬糸状虫(フィラリアの一種)が犬に感染することによって起こります。
蚊が動物から血液を吸う際に、ミクロフィラリア(幼虫)を同時に吸血します。
ミクロフィラリア(幼虫)は蚊の体内で成長し(成虫に)、犬や猫の血液を吸う際に成長した糸状虫が寄生します。

  • 近年、猫にもフィラリア症があることが分かってきました
  • 猫は犬に比べ血管が細く、フィラリアが詰まって重症化しやすいと言われています
  • また、完全室内の猫ちゃんにも感染が報告されています

診断

採血して、血液中にミクロフィラリアがいないか、顕微鏡で観察し判断します。
下図が血液中に見られたミクロフィラリアです。(染色液で紫色に染まっています)

治療

糸状虫は駆虫薬で駆虫できます。
毎月1回飲むお薬が各種使われています。三河地域では5月~12月に投与することが多いです。
感染している場合はフィラリアが検出されなくなるまで、通年 薬を投与します。