膿皮症

病態

膿、分泌物などが出る皮膚病です。
元々皮膚にいる細菌が過剰に増える事により発症します。
夏場に多い傾向があります。
細菌感染の深さによって表在性膿皮症、浅在性膿皮症、深在性膿皮症に分けられます。

治療後

診断

病歴や症状をみて診断します。
また、顕微鏡による細胞診断で好中球の細菌貪食像を確認します。

細菌
細菌

治療

外用の消毒剤やシャンプー、程度に応じて飲み薬や注射を用いて治療します。
概ね2週間以内に改善していきます。

皮膚糸状菌症

病態

皮膚糸状菌は、皮膚を好んで感染する真菌(カビ)です。
犬、猫に感染症を起こすものとして20種類以上が知られています。
痒みや脱毛が主な症状で、人に感染する場合もあります。
散歩時や野良猫、感染している動物からうつります。

動物が真菌感染と診断され、人に皮膚症状がある場合は皮膚科等 人の医療機関を受診ください

診断

寄生虫、細菌感染症などを除外した後、下記のwood灯検査(光ると陽性)や、真菌培養検査(赤変すると陽性)を用いて診断します。

wood灯検査
真菌培地
陽性

治療

内服薬(抗真菌薬)を基本とします。
また、環境改善、患部の毛刈り、シャンプー療法、外用薬を使用します。
人にもうつる病気なので、早めの治療が必要です。

疥癬

病態

ヒゼンダニ症ともいわれ、激しい痒みを示す皮膚炎です。
原因となるダニは、皮膚の角質層内で栄養を摂取しています。
のら猫ちゃんや、野生動物と接触があると感染する場合があります。

診断

表面の皮膚を掻きとり(掻爬検査)、ヒゼンダニを顕微鏡で観察します。

治療

スポット剤等で駆虫します。
犬・猫共に感染します。多頭飼いの方は、同居ペットも一緒に治療することをおすすめします。

治療前
疥癬
治療後

毛包虫症

病態

毛包や脂腺に寄生するニキビダニ(常在寄生虫)が過剰に増えた状態で、若いワンちゃんや、高齢のワンちゃんなど免疫能の低下や、皮膚の防護力が弱った時に増殖します。
脱毛、紅斑(赤み)、掻痒感(痒み)などがあります。
はじめは、口や眼回り、手足の先端に脱毛がみられます。次第に全身に広がります。

診断

抜毛検査、掻爬検査等で顕微鏡を用い毛包中を観察します。

治療

毛包中駆除薬の投与や、細菌の二次感染に対しは抗生物質などを投与します。
現在は新しい薬剤の登場により、比較的早期に治療可能な疾患となりました。

毛包虫
右脇
前肢
後肢

外耳炎

病態

鼓膜から耳道(外耳道)に発生する炎症性疾患です。
内科治療だけで改善しない場合や治療が遅れた場合、慢性化することがあります。
慢性化した場合は、耳道切除手術などの外科処置が必要となるため、早期に対処することが重要です。

治療前
治療後
外側耳道切除
ポリープ切除

診断

外耳炎が初発か再発か、耳の痒み、痛みがあるかを確認します。
耳道を洗浄するとともに耳垢を採取します。
採取した耳垢を染色し、ミミヒゼンダニやマラセチアがいないか顕微鏡で観察(検鏡)します。

マラセチア、酵母様真菌
ミミヒゼンダニ
ミミヒゼンダニ

治療

外耳炎は、過剰な耳垢が蓄積していることが多いため耳垢を除去します。
ミミヒゼンダニの治療には駆虫薬の全身投与を行い、マラセチア感染には抗真菌薬が配合された点耳薬を処方します。
外耳炎は繰り返しやすいので、動物もご家族様もストレス少なく治療できる方法をご提案できればと思います。

マラセチア性皮膚炎

病態

動物の皮膚、および口、肛門周囲粘膜、外耳道の表面に常在する酵母です。
何らかの原因で皮脂分泌が過剰になると、それを栄養源として過剰増殖します。
激しい痒みを示すとともに、赤み、かさつき、べたつきがみられます。
脂分泌過剰だと特徴的な臭いも生じます。

診断

症状と細胞診の結果に基づいて診断します。
マラセチアは健在な皮膚や外耳道にも存在するため、細胞診(テープの検査やガラスを皮膚に押し付ける検査)によって病変部に存在する酵母様真菌の数を診る必要があります。

治療

通常は他の動物に感染はしません。(うつらない)
全身性抗真菌薬や、シャンプー治療、内服によって治療します。

初診時
5ヵ月後 痒みも改善傾向です。

アトピー性皮膚炎

病態

遺伝的要因を背景とした慢性搔痒性皮膚疾患(痒みの続く皮膚病)です。
皮膚の病変は、主に腹部、顔(特に眼回り)、手足の指や指間、腋の下に現れます。
初期には皮膚の発赤、脱毛程度ですが、慢性化すると皮膚の肥厚、色素沈着、脂漏、紅斑が進みます。

アトピカ リーフレットより抜粋

アトピー性皮膚炎の柴犬ちゃん

増悪時
治療3カ月後 寛解時

診断

疥癬やアカラス、ノミアレルギー、食物アレルギーなど区別する必要があります。
特に食物アレルギーとの区別が重要で、環境アレルゲン抗原に反応する血液中のIgE(抗体)を検査する方法や、リンパ球の反応を見る血液検査などで診断を進めます。

治療

ステロイド 、シクロスポリン製剤、JAC阻害剤等を組み合わせて治療していきます。
薬は一長一短がありますので、獣医師とのコミュニケーションが必要となります。
最近では、1か月に1度の注射で効果が得られる場合があります。
また、シャンプーは家庭でできる最も効果的な治療です。状況に応じてクレンジングオイル、保湿剤を組み合わせます。
食物アレルギーを併発している場合には、低アレルゲンフードを継続的に与えると有効な場合があります。